コーヒーショップの列が全然進みません。前方では、バリスタがストレスを抱えている様子。カウンターから身を乗り出して、前の客にこう言います。「Sorry, we've just run out of oat milk.(すみません、ちょうどオーツミルクを切らしてしまって)」
オーツミルクは欧米のカフェで人気の植物性ミルク。これが無いと、ちょっとした騒ぎになることもあります。
客たちから一斉にため息が漏れます。この感覚、世界共通ですよね。これが、今回取り上げる最初の run を使った動詞の核心です。
run out of は、単に何かが「なくなった」という意味ではありません。供給があったものが、何らかのプロセスを経て使い果たされた、というニュアンスです。動詞の run が、まるでカウントダウンがゼロになるような、前に進む勢いを与えています。スマホのバッテリーも、突然消えるわけではなく、何時間も使っているうちに runs out(切れる)しますよね。
I need to go shopping. We've run out of snacks.
買い物に行かないと。お菓子が全部なくなっちゃった。
I'm running out of patience with these constant delays.
こうも遅延が続くと、そろそろ我慢の限界だ。
つまり run out of は、勢いが何かを空にするイメージです。では、その勢いが壁にぶつかったら?もっとあり得るのは、他の人にぶつかった場合です。
それが run into です。予期せぬ衝突を表す動詞です。車が電柱にぶつかるような物理的な衝突にも使えますが、最も強力なのは社会的な使い方。知っている人に予期せず出会う状況を描写します。
I ran into my old professor at the airport.
空港で昔の教授にばったり会った。
We ran into some unexpected problems with the server migration.
サーバー移行中に、予期せぬ問題にいくつか直面した。
勢いの物理学
これらのフレーズを個別に暗記するのはやめましょう。秘訣は、run が「脚で走る」ことではないと理解することです。句動詞における run は、制御不能な前進するエネルギー、つまりベクトル(方向性のある力)を表します。これが見えれば、あとは前置詞がすべてを教えてくれます。
エネルギー + out of = エネルギーがリソースをゼロまで使い果たす。
エネルギー + into = エネルギーが障害物(人、問題)に衝突する。
エネルギー + over = エネルギーが何かの上を力強く横切る。車が減速帯を running over(乗り越える)したり、もっと最悪なことに、誰かのスマホを running over(轢く)のを想像してみてください。
黄金ルールです。「run into の意味は何ですか?」と聞くのではなく、「run の勢いはどこに向かっていますか?」と自問してください。前置詞がその答えを教えてくれます。これこそが、run だけでなく、何百もの句動詞のシステム全体を解き明かす鍵なのです。
We ran out of coffee beans.
コーヒー豆を使い切ってしまった。
I ran into an old friend.
旧友にばったり会った。
He ran over the script one last time.
彼は最後にもう一度、脚本にざっと目を通した。
Can I run this idea by you quickly?
このアイデアについて、ちょっと意見を聞かせてもらえますか?
Let's run through the presentation before the meeting.
会議の前に、プレゼンの通し練習をしましょう。
She ran up a huge credit card bill on vacation.
彼女は休暇中にクレジットカードで多額の請求をこしらえた。